2021 年 82 巻 1 号 p. 206-211
症例は49歳の男性.下腹部痛を主訴に受診.手術や外傷の既往は認めなかった.腹部CTにて腹腔内に10cm大の辺縁平滑な嚢胞性病変を認め,骨盤MRIではT2強調画像にて辺縁低信号,内部高信号を示す多房性病変を認め,chronic expanding hematoma (以下CEH)と診断した.臨床症状を伴うため手術適応と判断し,腹腔鏡下に摘出術を施行した.病理組織学的検査では新旧混在した血腫を認めCEHと診断した.術後臨床症状は改善し,症状や病変の再発は認めない.CEHは外傷や手術を契機に発生し緩徐に増大する血腫で,多くは軟部組織や胸腔内に発生しており,腹腔内に認めるCEHはまれで,腹腔鏡下に切除した報告も少ない.今回,腹腔内に認めるCEHに対し腹腔鏡下に完全切除しえた1例を経験した.若干の文献的考察を加えて報告する.