日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
82 巻, 1 号
選択された号の論文の41件中1~41を表示しています
巻頭言
特別寄稿
  • 上尾 裕昭, 小西 敏郎, 金子 弘真, 万代 恭嗣
    2021 年 82 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    外科医減少を抑制する目的で,全国各支部の若手外科医を対象に学会主導のアンケートを実施し,210名の匿名回答から次の点が示された.

    若手外科医は「若者(学生・研修医)が外科を敬遠する理由」にwork life balance(WLB)の不足(家庭生活とのバランスなど)を挙げ,若者が外科を進路から除外する時期は43%が学生時代,40%が研修医時代と指摘した.若手外科医自身も43%が現在の職場でのWLB不足を感じ,子供イベント(出産・入学式・卒業式・運動会)への参加を希望しているが休暇を申請しづらい現状であり,若手外科医が歓迎する「働き方改革」の実現率は未だ低かった.

    そこで,若手外科医のWLB改善策として「年休利用の子供イベント休暇制度の導入」と「働き方改革の推進」を提案した.WLBへの配慮は全国支部長の認識(2016年調査)との乖離が認められ, 外科指導者層の意識改革が重要・急務と思われた.

綜説
  • 岡本 高宏, 吉田 有策
    2021 年 82 巻 1 号 p. 14-25
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    副腎,後腹膜,縦隔に生じた腫瘍はホルモンを産生している場合がある.ホルモン産生腫瘍であることを的確に診断されずに手術を受ける患者は,手術中そして術後に大きな危険にさらされる懸念がある.担当医は,こうした稀な疾患があることを認識し,周術期の安全に努めなければならない.

    副腎皮質および髄質から分泌されるホルモンを測定して過剰産生の有無を評価するが,皮質系ホルモンではACTHやレニンとのバランスから診断することが肝要である.また,副腎以外の部位(後腹膜,縦隔等)に生じた腫瘍でもノルアドレナリンを過剰産生することがある.

    カテコールアミン産生腫瘍に対してはα遮断薬投与による周到な術前準備が必要である.コルチゾール産生腫瘍では健側副腎の機能回復までの相当な期間,グルココルチコイドの補充を要する.アルドステロン過剰症では負荷試験で診断を確定したのち,副腎静脈サンプリングにて病変部位診断を行う.

臨床経験
  • 浮山 越史, 渡邉 佳子
    2021 年 82 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    X線単純撮影で異物が確認された小児の消化管異物症例の検討を行った.対象は2007年1月から2019年12月までに消化管異物を確認された15歳以下の小児である.検討項目は,年齢,性別,X線単純撮影にて確認された異物の部位,種類,誤嚥からX線単純撮影確認までの時間,治療とした.対象は218例であった.食道,胃,小腸・大腸の症例はそれぞれ,36,143,39例であった.食道異物はリチウム電池3例,コイン14例,磁石1例,丸い異物5例,その他13例であった.食道異物の治療は主にバルーンによる摘出または内視鏡にて摘出した.胃内異物は,丸い異物42例,コイン29例,磁石19例,ボタン電池19例が主なものであった.胃内異物の治療はマグネットチューブにより摘出した.小腸・大腸異物は全例経過観察となった.X線単純撮影で確認される年齢は2歳以上,確認されないのは1歳以下が多かった.これらの症例経験から,治療のアルゴリズムを作成した.

  • 原 良輔, 中川 基人, 由良 昌大, 田島 佑樹, 藤崎 洋人, 高野 公徳
    2021 年 82 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    成人鼠径ヘルニアに対するLichtenstein法(以下,本法)は世界的なガイドラインにおいて強く推奨されているが,現在も日本での施行数は少ない.われわれは2010年以降,積極的神経同定とpragmatic neurectomy,自己接着性メッシュへの追加固定を行う本法を継続している .2014年から2018年までの5年間に当院で本法を施行した患者を対象に,術中の神経対処とメッシュの追加固定および治療成績を後方視的に検討した.その結果,腸骨下腹神経,腸骨鼠径神経,陰部大腿神経陰部枝をそれぞれ73%,69%,85%の症例で同定し,腸骨下腹神経を49%の症例で切除した.メッシュの追加固定は全例に行った.手術と関連する合併症は再発1例を含む2例のみであり,慢性疼痛は認めなかった.積極的神経同定とpragmatic neurectomy,自己接着性メッシュへの追加固定を行う本法を施行し,良好な治療成績を得ている.

症例
  • 馬場 雅之, 藤瀬 悠太, 新野 大介, 岩崎 啓介
    2021 年 82 巻 1 号 p. 38-45
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は68歳,女性.右乳癌(T2N0M0 Stage IIA)に対し右乳房部分切除を施行した.術後7年目に突然の労作時呼吸困難が出現,徐々に症状は進行し体動困難となったため当院を受診した.胸部造影CTで明らかな器質的疾患はみられなかった.心エコーで右心負荷所見を認め,肺血流シンチグラフィーで両側肺末梢に多発性楔状欠損が認められた.肺動脈吸引細胞診では異型細胞を認め,病歴,臨床症状,細胞診より乳癌再発に伴う,pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(以下PTTM)と診断した.抗凝固療法,呼吸循環管理を継続するも急激に全身状態が悪化し,入院後4日目に永眠した.PTTMは急速に呼吸不全が進行する,予後不良な病態である.担癌患者に発症した突然の呼吸困難,右心不全に対しては,本疾患も念頭に置き早期の診断確定,治療介入が望まれる.

  • 柵木 晴妃, 松井 哲, 木下 貴之, 村田 有也
    2021 年 82 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    更年期障害に対してホルモン補充療法(以下HRT)を継続していた患者が乳癌の診断確定となり,術前にHRTを中止したところ,腫瘤が急速に縮小した1例を経験したので報告する.症例は52歳,女性.2019年3月に左乳房腫瘤を自覚し,精査目的に当院へ紹介となった.乳腺エコーでは左乳房内上部に16mm大の低エコー腫瘤を認め,針生検を施行したところ,浸潤性乳管癌ER(+:95%),PgR(+:80%),HER2(1+)であった.2018年7月よりエストラジオール・酢酸ノルエチステロン貼付剤を使用していたため,2019年4月に中止した.2019年5月手術前日の乳腺エコーでは,病変は8mmと著明に縮小していた.術前にHRTを中止することで,急激な血中エストラジオール濃度の低下が生じた結果腫瘍が縮小したものと考えられる.長期のHRTには乳癌発症リスクが上昇することが知られており,本症例のように短期の投与であっても,HRTが潜在する腫瘍の増大に寄与する可能性があると言える.

  • 岡田 真典, 岡田 和大, 久保 友次郎, 中村 龍二, 藤原 俊哉, 松浦 求樹
    2021 年 82 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は67歳,女性.咳嗽と血痰が増悪したため前医を受診し,CTで右肺下葉に37mm大の不整形充実性腫瘤影を認め,PETでSUVmax 8.2の異常集積を認めた.気管支鏡検査で確定診断に至らなかったが,原発性肺癌が疑われ当院へ紹介された.気管支鏡検査を再検したが悪性所見を認めず,培養検査で有意菌を検出しなかった.しかし,6カ月後腫瘤影が42mm大に増大し,SLXが上昇したため,診断と治療目的に胸腔鏡補助下右下葉切除を施行した.術中迅速組織診では炎症性病変との診断であり,病理学的検索で硫黄顆粒を認め,培養検査で嫌気性菌を検出したため肺放線菌症と診断した.追加抗菌薬投与は行わず,術後1年6カ月経過し再発を認めていない.腫瘤形成性の肺放線菌症は肺癌との鑑別が問題となるが,内科的検査で診断に至らず,肺切除により確定診断されることも多い.診断と治療の適切な機会を逸することなく手術を選択することも肝要である.

  • 河本 宏昭, 安部 貴之, 手登根 勇人, 宮城 幹史, 江口 征臣, 仲宗根 由幸
    2021 年 82 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は43歳,男性.左胸部痛と体動時呼吸苦を自覚しバレニクリンによる禁煙治療を受けていた.症状増悪のため受診した際に胸部X線で気胸を認めた.CTで胸膜直下に空洞性病変を認め,胸腔ドレーン留置後もエアリークは持続した.結核や真菌感染症は否定され,原発性肺癌に合併した気胸と診断し左肺上葉切除術を行った.病理学的に多形癌,pT2bN2,cM0,Stage III Aと診断した.腫瘍近傍に嚢胞を合併し気胸に至る症例は多く報告されており,近年では分子標的薬などの化学療法に伴い薄壁空洞化した病変による気胸の報告が増えているが,自然経過で空洞化した肺癌が破裂・穿孔することで気胸を合併したとする報告は少なく,文献的考察を加え報告する.

  • 佐藤 史朋
    2021 年 82 巻 1 号 p. 62-65
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    67歳,男性.検診で右上葉に1.5cm大の結節を認めた.胸部CTでは右S1に充実性病変を認め,気管支鏡検査を計画した.気管支鏡では右上葉はB1+3の2分岐であり,右中間気管支幹の中葉気管支外側よりB2が分岐していた.気管支鏡検査では診断がつかず,胸腔鏡下肺部分切除で肺腺癌と診断した.全身検索では他臓器転移を認めずcT1bN0M0 stage IA2と診断し後日,右上葉切除と縦隔リンパ節郭清を行った.分葉不全があったが,肺動脈や肺静脈の分岐異常は認めず,中間気管支幹の末梢からやや太いB2が分岐していることを確認し,staplerでの気管支処理とした.気管支分岐異常を伴う症例では,肺切除の際に注意が必要であり若干の文献的考察を加え報告する.

  • 山名 浩樹, 飯田 聡, 齋藤 賢将, 二瓶 健太郎, 山崎 繁
    2021 年 82 巻 1 号 p. 66-71
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は37歳の男性で,特記すべき既往歴はない.暴飲・暴食をした翌日に腹痛・嘔吐の症状が出現し,3日後に近医を受診し急性腹症の疑いで当院に紹介となった.身体所見では,腹部は著明に膨満し右上腹部に筋性防御を認めた.腹部CTでは胃から十二指腸水平脚までが著明に拡張し十二指腸壁内気腫を認め,上腸間膜動脈症候群による急性胃拡張・十二指腸壊死と診断し緊急手術を行った.開腹すると,十二指腸には炎症所見を認めたが壊死所見はなく,胃体上部前壁に径5cmの壊死部を認めたため胃全摘術を施行した.術後の経過は良好で,術後17日目に退院となった.上腸間膜動脈症候群は急性胃拡張による胃壊死をきたすことがある.診断は困難なため,強い腹痛を伴う急性胃拡張は緊急手術を考慮する,または慎重な経過観察を要する.

  • 井上 正純, 木全 大, 金田 崇良, 下田 将之, 西川 秋佳, 篠﨑 浩治
    2021 年 82 巻 1 号 p. 72-78
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は42歳,男性.以前より胃穹窿部に粘膜下腫瘍の指摘があり,精査の方針となった.上部消化管内視鏡検査では胃穹窿部に正常粘膜に覆われた隆起を認め,cushion sign陽性のため,リンパ管腫などの軟性の腫瘍を疑った.腹部造影CTで胃穹窿部大彎に胃壁内から壁外へ突出する径50mm大の多房性の嚢胞性病変を認めたが,内部に充実成分は認めなかった.診断的治療目的に腹腔鏡下胃局所切除術を行った.病理組織像で嚢胞壁構造が胃壁に類似し,胃および肺上皮の特徴を有したことから,前腸由来の胃重複症と診断した.胃重複症はそのほとんどが小児期に診断される稀な疾患であり,成人では出血や癌化のリスクを伴う.画像検査のみでの正確な診断は困難とされるため,胃重複症が疑われる場合には診断を兼ねた積極的切除を考慮すべきであり,腹腔鏡下手術の良い適応と考える.

  • 鈴木 翔輝, 貝羽 義浩, 吉田 茉実, 関口 悟, 野村 栄樹
    2021 年 82 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は67歳,女性.繰り返す食後の腹部膨満感と腹痛を主訴に当院を受診した.腹部造影CTで左上腹部の小腸に限局性の拡張を認め,小腸造影検査では中部小腸に嚢状の拡張部と造影剤の滞留を認めた.経口ダブルバルーン小腸内視鏡検査では空腸に内腔の拡張を認めたが,明らかな閉塞起点は認めなかった.空腸憩室の術前診断で腹腔鏡補助下小腸部分切除術を施行した.病理組織学的検査で空腸重複腸管と診断した.術後経過は良好で第5病日に退院した.術前にあった食後の腹部膨満感,腹痛は術後に改善した.小腸重複腸管は小児期に発見されることが多く,また部位では回盲部が多いとされ,成人で診断される空腸重複腸管は稀である.今回,成人で発症した空腸重複腸管に対して腹腔鏡補助下小腸切除術を施行した症例を経験したので報告する.空腸重複腸管は稀な病態であるが悪性化の可能性もあり,空腸憩室の術前診断ができれば腹腔鏡下切除術を考慮するべきである.

  • 吉本 恵理, 金澤 伸郎, 渡部 和玄, 三井 秀雄, 吉田 孝司, 黒岩 厚二郎
    2021 年 82 巻 1 号 p. 85-92
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は82歳,女性.主訴は腹痛.前医において腹痛の原因検索目的で腹部造影CTを施行し,骨盤内に限局した嚢胞様腫瘤が指摘された.消化管穿孔による腹腔内膿瘍を疑い,加療目的に当院へ転院搬送され,手術を施行した.手術所見では,消化管穿孔による骨盤内膿瘍形成ではなく,拡張した小腸が巨大な嚢胞様腫瘤を形成していることが確認された.腫瘤は骨盤底に強固に癒着していたため可及的に小腸部分切除術を施行した.術後検体の免疫染色では,CD3(+),CD4(-),CD5(-),CD7(+),CD8(+), CD20(-),CD56(-),EBER in situ hybridization(-).また,小~中型の異型リンパ球様細胞が壁全層性に認められ,粘膜では上皮向性で比較的単調に増殖・浸潤を示唆する像がみられることから,MEITL(monomorphic epitheliotropic intestinal T-cell lymphoma)と診断した.

    術後13日目に退院となり,退院後は化学療法が施行されたが,術後10カ月目に化学療法PDと評価され,best supportive careの方針となり,術後12カ月で原病死した.

  • 髙橋 雅哉, 桑原 麻衣, 戸田 匠, 新堰 佳世子, 久島 昭浩, 布村 眞季
    2021 年 82 巻 1 号 p. 93-97
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    患者は68歳,男性.1週間前からの食思不振を主訴に受診し,CT所見から腸間膜内の膿瘍と診断され入院となった.便培養は陰性だった.エルシニア感染を疑い,セフトリアキソンを使用したが膿瘍の縮小を認めず,第6病日に開腹術を行った.遠位回腸に接する7×8cmの腫瘤を腸間膜内に認め,回腸とともに切除した.病理組織学的検索では,腫瘤は膿瘍と周囲の腫大リンパ節からなっていたが,膿瘍自体にリンパ節組織は存在しなかった.膿汁培養にてYersinia enterocolitica を検出した.エルシニアによる腸間膜内の膿瘍は本症例を含め9例報告されており,うち8例が手術を施行されていた.エルシニア感染症は保存治療が原則だが,腸間膜内に膿瘍形成して薬物治療が奏効しない場合には,外科的治療に踏み切ることが治療期間短縮につながると考えた.

  • 豊福 篤志, 伊波 悠吾, 是枝 侑希, 吉田 昂平, 日暮 愛一郎, 笹栗 毅和, 永田 直幹
    2021 年 82 巻 1 号 p. 98-107
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は66歳,男性.2018年6月,当院耳鼻科で鼻腔悪性黒色腫に対して切除手術を施行.その後,市内の大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科でフォローアップされた.2019年2月に後鼻孔に局所再発があり,内視鏡下副鼻腔手術を施行され,以後,術後補助化学療法としてnivolumabを合計18コース施行.2019年11月に咽頭後リンパ節の再発を認め,pembrolizumabを合計2コース施行後に,陽子線治療を施行.その後2020年5月に腹痛があり,また貧血の進行を認めたために6月に当院消化器内科を紹介.回腸末端から約100cm 口側の回腸腫瘍であり,術前内視鏡が到達できずに小腸悪性腫瘍の術前診断で,7月に腹腔鏡下回腸部分切除術+リンパ節郭清術を施行した.術後の病理診断で,悪性黒色腫の転移性小腸腫瘍の診断となった.術後経過は順調であり,外来にてpembrolizumabによる化学療法を再開継続治療中である.

  • 中居 伴充, 小林 隆, 河野 義春, 森 和彦, 南村 圭亮, 平田 泰, 森 正也
    2021 年 82 巻 1 号 p. 108-114
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は73歳の男性で,2001年右腎細胞癌に対し右腎摘除術を施行した.術後化学療法実施中の2010年甲状腺転移に対し甲状腺部分切除,2012年右第6肋骨転移に対し切除術を施行した.2017年11月から黒色便,貧血の進行を認め,2018年1月にダブルバルーン小腸内視鏡検査で腎細胞癌小腸転移と診断され,同年2月に小腸部分切除を施行した.また,2011年に指摘されたが確診に至らなかった肺の小結節影が,2018年のCTで増大傾向を示す多発結節を形成していたため腎細胞癌肺転移と考えた.腎細胞癌小腸転移は比較的稀であるが,進行性の貧血を認め,消化管出血が疑われる場合は小腸転移も念頭に置いた精査をするべきである.また,小腸転移に先行し肺転移を認めることが多く,肺転移を認めた場合は一定期間小腸転移に留意したフォローが必要と考える.そして,早期に小腸転移を発見し,積極的に外科的切除を行うことで生存期間を向上させる可能性が示唆された.

  • 塚田 暁, 田中 智規, 小松 優香, 津田 晋, 坪井 香保里, 八木 健
    2021 年 82 巻 1 号 p. 115-119
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は54歳,女性.HTLV-1感染があり,進行する脊髄麻痺と排尿障害が出現し,32歳時にHTLV-1関連脊髄症と診断された.2019年頃より高度便秘で当院に入院し治療を受けていた.2020年1月に便秘治療のため入院したが,5月にも腹部腹満と排便困難で当院を紹介受診した.内科的治療が行われたが,入院中にも排便排ガス困難による大腸ガス貯留による腹満が再発したために,外科的治療目的に紹介となった.HTLV-1関連脊髄症による続発性巨大結腸症と診断し,結腸全摘術+回腸廔造設術を施行した.術後経過は良好で,下剤や止痢剤など使用せずに排便コントロールが可能となった.術前は食事を摂取することによる便秘を気にして食事摂取量が少量であったが,食事に対する意欲も改善し食事摂取量が4割増加した.HTLV-1関連脊髄症による慢性便秘に伴う続発性慢性巨大結腸症に対する外科的治療が,患者QOLを改善した.同疾患の便秘治療において外科的治療が選択肢の一つになりえると考えられる.

  • 角掛 純一, 藤尾 淳, 臼田 昌広, 鈴木 温, 手島 仁, 宮田 剛
    2021 年 82 巻 1 号 p. 120-126
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    バリウムを用いた上部消化管造影後に生じる下部消化管穿孔は稀であるが,当院では2009年から2019年までの間に8例の症例を経験している.平均年齢は63歳,検査から発症までの平均時間は2日であった.穿孔部は6例でS状結腸に認めた.消化器疾患に関して3例で腸管憩室の既往があり,2例が慢性便秘症にて下剤常用者であった.5例で一期的腸管吻合が可能であった.在院日数の平均値は2日であり,在院死となった症例は認めなかった.医学中央雑誌で「バリウム」「下部消化管穿孔」「大腸穿孔」と検索したところ,26例の報告を認めた.自験例と合わせた34例で比較検討したが,全体の3分の1が消化器疾患を有する症例で検査から概ね4日以内に発症し,穿孔部位はS状結腸に多いとの結果であった.特に,消化器疾患を有する方がバリウムを用いた上部消化管造影検査後に強い腹痛を訴えた場合には,下部消化管穿孔の発症に留意する必要がある.

  • 押切 裕之, 小野寺 優, 臼田 昌広, 手島 仁, 宮田 剛
    2021 年 82 巻 1 号 p. 127-131
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    完全内臓逆位は,本邦で3,000から5,000人に1人の割合で認められる稀な先天奇形である.症例は72歳,女性.既往に完全内臓逆位を有していた.便潜血陽性の精査にて上行結腸に2型腫瘍を認め,術前診断はcT3N0M0 cStage II aであった.手術は内側アプローチによる腹腔鏡下右結腸切除術を行う方針とした.体位は砕石位,ポート配置はダイヤモンド型をベースにした5ポートとし術者は脚間,助手は通常患者左側に立つ所を右側に立って手術を行った.手術時間163分,出血量18g,合併症無く術後第9病日に退院した.病理組織検査で中分化型腺癌pT4b(虫垂)N0M0 pStage II cの診断であった.本症例では,3D-CTを用いて解剖学的位置関係,血管の走行を予め把握して手術を行うことができた.また,術者は脚間からの内側アプローチで通常と同様にco-axialの手術操作を行うことができ,安全に施行可能であった.

  • 野中 健一, 馬庭 幸詩, 鷹尾 千佳, 甲村 稔, 武鹿 良規, 日下部 光彦
    2021 年 82 巻 1 号 p. 132-136
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は89歳の女性で,嘔吐と腹痛を主訴に近医より紹介された.4年前に直腸癌に対し,当院で腹腔鏡下Hartmann手術(横行結腸単孔式)を施行した.受診時のストーマ色調はやや不良であった.造影CTを施行したところ傍ストーマヘルニアを認めたが,明らかな造影不良域を認めなかった.息止め不良で脱出腸管が何か,同定することができなかった.経過観察目的にて入院としたが症状は改善せず,2日後にストーマが壊死状態となったため緊急手術を行った.ヘルニア内容はTreitz靱帯から70~90cm肛門側の空腸で壊死を伴っていた.また,ストーマ腸管はヘルニア門の末梢側で壊死していた.小腸部分切除・吻合術,人工肛門閉鎖術,横行結腸単孔式人工肛門再造設術を施行した.傍ストーマヘルニアから絞扼性腸閉塞およびストーマ壊死に至ることは非常に稀であり,文献的考察を加えて報告する.

  • 河野 秀俊, 寺崎 正起, 岡本 好史, 鈴村 潔, 土屋 智敬, 西前 香寿
    2021 年 82 巻 1 号 p. 137-140
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は39歳の女性で,腹部手術歴なし.腹痛を主訴に当院を受診し,CTにて横行結腸脾彎曲に腫瘤性病変と腸管壁内への出血を疑う所見を認め,緊急開腹手術を施行した.術中所見では横行結腸脾彎曲に充実性腫瘤を認め,胃背側,膵尾部,脾門部に強固な癒着を認めた.胃部分切除,膵体尾部,脾合併切除,結腸部分切除を施行した.病理結果は紡錘形の線維芽細胞の増殖を認めデスモイド腫瘍に相当する像と診断され,腫瘍内には出血巣が認められた.腹部手術歴のない患者に発生し,出血を契機に診断されたデスモイド腫瘍は稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 北原 拓哉, 和城 光庸, 後藤 諒, 片桐 忍, 成田 淳, 大塚 将之
    2021 年 82 巻 1 号 p. 141-144
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は70歳,男性.腹痛・血便を主訴に受診し,腹部CTで下行結腸の腸重積と診断した.保存的治療で自然整復され,下部内視鏡検査で同部位に粘膜下腫瘍様隆起を認めた.悪性を否定できず,また,重積再発予防のため結腸切除を行う方針となった.手術は腹腔鏡下下行結腸切除術を施行した.臍部にカメラポートを挿入し合計5ポートで行った.臍部に4.0cmの小切開を行い,機能的端々吻合により再建した.摘出標本の肉眼所見で,2.0×1.3×1.0cmの有茎性隆起性病変様の粘膜下病変を認めた.病理組織学的所見で,粘膜下組織内に好酸球を含む炎症細胞浸潤を伴った線維性間質およびが小血管の増生が認められた.明らかな悪性所見や腫瘍性病変は認めず,inflammatory fibroid polyp(IFP)と診断した.術後7日目に退院した.腸重積を合併した結腸IFPの報告は稀であり,腹腔鏡下に切除した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

  • 廣田 昌紀, 武元 浩新, 中塚 梨絵, 長岡 慧, 大島 聡, 安原 裕美子
    2021 年 82 巻 1 号 p. 145-150
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は57歳,男性.下腹部痛と発熱を主訴に当院を受診した.胸腹部CTにて左肺S8と肝S4の2箇所に膿瘍,S状結腸に壁肥厚が認められ,下部消化管内視鏡検査にて肺膿瘍・肝膿瘍を合併したS状結腸癌(cT3N0M0 Stage IIa)と診断した.肝膿瘍穿刺にてα-streptococcusが検出され,抗菌剤投与により全身状態が改善した後にS状結腸切除術(D3)を施行した.病理組織診断はtub1,pT3N0M0 Stage IIaで,術後補助化学療法は行わずに経過観察中であるが,術後2年経過し膿瘍の再燃や大腸癌の再発は認めていない.今回,肺膿瘍・肝膿瘍を合併した大腸癌の1例を経験したので報告する.

  • 山本 久斗, 小川 晃平, 田村 圭, 坂元 克考, 高井 昭洋, 高田 泰次, 北澤 理子
    2021 年 82 巻 1 号 p. 151-158
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    肝原発神経内分泌腫瘍は稀であり,術前診断に苦慮することが多い.症例は58歳の女性.6年前よりCTにて肝S1/S4にひょうたん型の腫瘍を認めたが,増大傾向にあったため紹介された.CTにて肝S1/S4に径7cm大の境界明瞭な腫瘍を認め,右後区域肝管は軽度拡張を認めた.胆管浸潤を伴う肝原発悪性腫瘍の診断にて肝左葉・尾状葉切除,肝外胆管切除術を施行した.病理では腫瘍細胞は均一な類円形核で索状~胞巣状構造をとり,好酸性間質を有し,免疫染色ではhepatocyteは陰性,CD56とsynaptophysinが陽性,Ki67 index(MIB-1 index)は5%,細胞分裂像は3/10HPFでありWHO分類(2010年)のNET G2に相当した.他臓器に原発病変を認めなかったことから,肝原発神経内分泌腫瘍と診断した.術後41週現在,無再発生存中である.

  • 栗原 重明, 平田 啓一郎, 岡田 拓真, 内間 恭武, 竹内 一浩
    2021 年 82 巻 1 号 p. 159-165
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は82歳,女性.64歳時より原発性胆汁性胆管炎(primaly biliary cholangitis,以下PBC)に対して内服加療中,81歳時に横行結腸癌に対して腹腔鏡下左半結腸切除術を施行した.術1年後に肝S3に15mm,10mm大の腫瘍を認め,異時性肝転移の術前診断で開腹下肝S3亜区域切除術を施行した.術後経過は良好で,術後14日目に退院となった.病理組織学的診断は悪性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma,以下DLBCL)であり,肝臓以外に病変は認めず,肝原発悪性リンパ腫と診断した.術後補助化学療法としてR-CVP療法を4コース施行し,術後18カ月経過も再発所見なく経過している.悪性リンパ腫において肝原発は稀であり,特異的な検査所見も認めない.術前診断は容易ではないが,肝外病変を認めない場合には肝切除術は成績も良好であり,診断,治療のいずれにおいても有用と考えられる.

    また,発症には慢性肝疾患や自己免疫疾患の関連も指摘されているが,不明な点も多い.今回,PBCと合併した1切除例を経験したので文献的考察を加え報告する.

  • 田中 祐介, 金岡 祐次, 前田 敦行, 高山 祐一, 高橋 崇真, 桐山 宗泰
    2021 年 82 巻 1 号 p. 166-173
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は82歳の男性で,B型慢性肝炎の経過観察中に肝腫瘤を指摘された.腹部MRIにて肝S8に早期相から後期相まで持続濃染する腫瘤を認めた.肝動脈造影下CT(CTHA)では早期濃染を認め,後期相まで濃染が持続し,経動脈性門脈造影下CT(CTAP)で欠損像を認めた.非典型的な肝細胞癌の診断で手術を施行した.病理組織学的には細胆管細胞癌であった.術後4カ月の腹部造影MRIで肝S7に早期濃染し後期相ではwash outする腫瘤を認めた.CTHAで早期濃染,後期相で内部は不均一に潜時濃染,CTAPでは欠損像を認めた.造影効果が前回の腫瘍と類似しており,細胆管細胞癌の再発の診断で手術を施行した.病理組織学的診断は高分化型の肝細胞癌であった.細胆管細胞癌と肝細胞癌は異時性に発生することがある.

  • 岸本 裕, 小倉 俊郎, 高橋 遍, 網倉 克己, 川島 吉之, 坂本 裕彦, 神田 浩明, 石川 文隆
    2021 年 82 巻 1 号 p. 174-179
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は49歳の男性.尿管結石発作で他院にて施行した腹部CTで,偶発的に膵腫瘍を指摘された.精査の結果,傍大動脈リンパ節転移を伴う膵神経内分泌腫瘍の診断となり,膵頭十二指腸切除,傍大動脈リンパ節郭清を施行した.術後7年経過した現在も無再発生存中である.膵・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドラインでは切除可能な遠隔転移を有する膵神経内分泌腫瘍は原発巣ならびに転移巣の切除適応があり,生命予後の延長が期待できるとされ,手術を中心とした集学的治療を推奨している.しかし,傍大動脈リンパ節転移を伴う膵神経内分泌腫瘍に対する切除報告は稀であり,その長期予後は明らかではない.膵神経内分泌腫瘍は傍大動脈リンパ節転移を有する場合でも,切除により長期予後が得られる可能性があることを示唆する症例であり,文献的考察を加え報告する.

  • 久保 進祐, 森山 大樹, 大内田 研宙, 進藤 幸治, 長尾 晋次郎, 中村 雅史
    2021 年 82 巻 1 号 p. 180-186
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は56歳の男性で,胸部食道癌手術の前処置としてグリセリン浣腸を行ったところ強い肛門痛と少量の出血をきたした.症状はすぐ軽快したため,予定通り手術室へ搬入した.全身麻酔導入時に少量の赤色尿を認めたが血液検査やバイタルサインに異常を認めなかったため,予定通り手術を施行した.術中尿量は0mLであり,術後も無尿が続いた.急性腎不全と診断し術翌日から持続的血液濾過透析(CHDF),また溶血性腎不全を念頭にハプトグロビンの投与を開始した.術後10日目までCHDFを行い,その後も血液透析を行った.腎機能は徐々に改善し術後27日目に退院し,術後2カ月で腎機能は正常化した.グリセリン浣腸は汎用されているが,その重篤な合併症としての急性腎不全は頻度も低く,十分に認識されているとはいえない.本症例のように重篤な合併症を引き起こす可能性があることを医師だけでなくその他の医療従事者も知っておく必要がある.

  • 白水 良征, 藤原 省三, 阿南 勝宏, 藤田 文彦, 赤木 由人
    2021 年 82 巻 1 号 p. 187-193
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は71歳の男性で,1週間前から食欲不振,嘔吐が持続し当院を受診した.腹部CTにて十二指腸下行脚を圧排する14×13cmの右腎嚢胞ならびに著明な胃の拡張を認めた.十二指腸の通過障害による腸閉塞症状をきたした巨大腎嚢胞と診断した.経皮的嚢胞ドレナージを行い,硬化療法として塩酸ミノサイクリン(以下MINO)200mgを嚢胞内に注入した.第7病日の腹部CTでは嚢胞は著明に縮小し,十二指腸下行脚の圧排も改善していた.治療後は消化器症状の再燃を認めず,第10病日に退院となった.腎嚢胞は大半が無症状なことから治療対象となることは少ないものの,有症状の場合は治療対象となる.有症状の中でも腸閉塞症状は極めて稀であり,これまでの報告例も極めて少ない.十二指腸閉塞症状を伴う巨大腎嚢胞に対して嚢胞ドレナージと硬化療法により,良好な治療効果が得られた1例を報告する.

  • 森本 大士, 林 正吾, 武藤 俊博, 吉田 滋, 仲田 和彦, 井上 総一郎
    2021 年 82 巻 1 号 p. 194-200
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は71歳,女性.術後14年経過後の子宮体癌,術後1年6カ月経過後の多発早期胃癌,術後1年経過後の肺癌の重複癌既往があり,外来経過観察中であった.CTにて胃癌の診断時より存在した腹膜結節の増大および新規の肝腫瘍が指摘され,治療方針相談目的に当科初診となった.MRIやFDG-PET検査などの画像検査が施行され,他病変は認められなかったが,腹膜結節と肝腫瘍が同一疾患か否か,転移性病変か否かなどの確定診断は困難であった.そのため,十分なインフォームドコンセントの後に診断的治療目的にて両病変ともに外科的切除を施行した.病理組織学的検査では両病変ともに子宮体癌の転移再発と診断された.術後10年以上経過後の子宮体癌の転移再発は非常にまれであり,既往症の術後経過年数にとらわれずに再発の可能性を念頭に置くべきと考えられ,文献的考察を加えて報告する.

  • 河田 直海, 山元 英資, 浦岡 未央, 田村 周太, 友松 宗史, 梅岡 達生
    2021 年 82 巻 1 号 p. 201-205
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は83歳,男性.発熱と右腰背部膨隆を主訴に内科に入院,CTで腰背部の筋内膿瘍が疑われ外科に紹介された.穿刺排膿と抗菌薬による保存的治療で軽快したが,抗菌薬投与終了3週間後に再燃し,経皮ドレナージを行った.CTを見直すと膿瘍内に魚骨が疑われ,外科に転科し腰椎麻酔下で魚骨摘出術を行った.術後経過は順調であった.下部消化管内視鏡で上行結腸に多数の憩室,肝彎曲部に中央にポリープ様隆起を伴う限局した粘膜浮腫があり,誤飲した魚骨が結腸から後腹膜に穿通,さらに胸腰筋膜下まで迷入し膿瘍を形成したと考えられた.魚骨が消化管外に穿通した報告例は散見されるが,後腹膜から背筋に至った報告はまれと思われたので報告した.

  • 大村 悠介, 廣 純一郎, 北嶋 貴仁, 井出 正造, 大井 正貴, 問山 裕二
    2021 年 82 巻 1 号 p. 206-211
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は49歳の男性.下腹部痛を主訴に受診.手術や外傷の既往は認めなかった.腹部CTにて腹腔内に10cm大の辺縁平滑な嚢胞性病変を認め,骨盤MRIではT2強調画像にて辺縁低信号,内部高信号を示す多房性病変を認め,chronic expanding hematoma (以下CEH)と診断した.臨床症状を伴うため手術適応と判断し,腹腔鏡下に摘出術を施行した.病理組織学的検査では新旧混在した血腫を認めCEHと診断した.術後臨床症状は改善し,症状や病変の再発は認めない.CEHは外傷や手術を契機に発生し緩徐に増大する血腫で,多くは軟部組織や胸腔内に発生しており,腹腔内に認めるCEHはまれで,腹腔鏡下に切除した報告も少ない.今回,腹腔内に認めるCEHに対し腹腔鏡下に完全切除しえた1例を経験した.若干の文献的考察を加えて報告する.

会報
日本臨床外科学会会則
日本臨床外科学会内規
日本臨床外科学会支部に関する規定
日本臨床外科学会臨床研究の利益相反に関する指針
第81巻総目次,筆頭著者名および総索引用語
編集後記
日本臨床外科学会役員等氏名
feedback
Top