2021 年 82 巻 1 号 p. 57-61
症例は43歳,男性.左胸部痛と体動時呼吸苦を自覚しバレニクリンによる禁煙治療を受けていた.症状増悪のため受診した際に胸部X線で気胸を認めた.CTで胸膜直下に空洞性病変を認め,胸腔ドレーン留置後もエアリークは持続した.結核や真菌感染症は否定され,原発性肺癌に合併した気胸と診断し左肺上葉切除術を行った.病理学的に多形癌,pT2bN2,cM0,Stage III Aと診断した.腫瘍近傍に嚢胞を合併し気胸に至る症例は多く報告されており,近年では分子標的薬などの化学療法に伴い薄壁空洞化した病変による気胸の報告が増えているが,自然経過で空洞化した肺癌が破裂・穿孔することで気胸を合併したとする報告は少なく,文献的考察を加え報告する.