2021 年 82 巻 10 号 p. 1828-1831
症例は59歳,女性.腹痛を主訴に前医を受診し,腹部CTで腸間膜脂肪織炎と診断された.抗菌薬治療で一旦軽快したが,約1カ月後に発熱と腹痛が再燃し,再受診した.画像検査で空腸の小腸間膜穿通が疑われ,精査・加療を目的として当院に紹介された.
経口的小腸内視鏡検査で,空腸に不整な粘膜隆起性病変を認め,同部位から生検したが確定診断には至らなかった.診断的治療として,小腸部分切除術を施行した.術後病理組織学的検査で,異所性慢性膵炎急性増悪により小腸穿通をきたしていたことが判明した.術後経過は良好で,術後11日目に自宅退院となった.
異所性膵は臨床的症状を呈することは少なく,検査や手術の際に偶発的に発見されることが多い.小腸穿通や穿孔の原因として,異所性膵炎の可能性を念頭に置く必要があると考えられた.