2021 年 82 巻 11 号 p. 2023-2027
症例は70歳,男性.腹部膨満を主訴に,S状結腸狭窄による腸閉塞を発症した.前医の下部消化管内視鏡(CS)では病変の観察が困難で術前に診断がつかなかったが,横行結腸の人工肛門造設術を施行された.術後3カ月にS状結腸膀胱瘻を形成し,さらに皮膚瘻の形成に至った.その後,根治術目的で当科へ紹介となった.CTにてS状結腸~直腸の壁肥厚が著明であり,経過としても悪性腫瘍が疑われたが,当科でのCS時には病変部の観察が可能で,悪性所見は指摘されず,憩室を多数認めた.憩室炎による結腸膀胱皮膚瘻と診断し,手術を行った.泌尿器科にて両側尿管ステント留置後に,腹壁の瘻孔を含めてS状結腸直腸切除と膀胱部分切除術を行った.一時的回腸人工肛門造設術を施行した.病理学的には悪性所見はなく,憩室炎の診断であった.悪性腫瘍との鑑別を要したS状結腸憩室炎による結腸膀胱皮膚瘻に対し,適切に診断し,他科と協力し根治術を完遂することができた.