2021 年 82 巻 2 号 p. 332-338
症例は35歳,女性.健診の乳房超音波検査にて左乳房腫瘤を指摘され,二次精査で針生検を施行,線維腺腫の診断であった.生検時は大きな出血もなく終了.生検翌日より左乳房表在血管の怒張と違和感を認め,前医を受診し同部位にthrillを触知し,定期経過観察としていたが,2年経過した時点で症状増悪認めたため当院を紹介受診となった.CTにて乳房表在に多数の拡張血管と乳房内に多数の動脈からの流入血管を疑う所見を認めた.血管造影検査にて3本以上の流入動脈と2本の流出静脈を認め,左乳房内動静脈瘻の診断となった.Schöbinger分類の第II期(拡張期)として,進行すると潰瘍形成,出血,心不全などの全身合併症を引き起こし,治療困難となる可能性を考慮し,塞栓術を施行した.術後,shuntは消失し,その後2年再発なく経過している.今回われわれは,乳房生検に伴う合併症として乳房内動静脈瘻の1例を経験したので報告する.