日本臨床外科学会雑誌
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臨床経験
Stage IV乳癌の原発巣手術の治療意義
工藤 俊梅津 梨恵子
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2021 年 82 巻 2 号 p. 327-331

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抄録

目的:当院で経験したStage IV乳癌の原発巣手術の意義を治療成績から検討する.対象と方法:2001年~2014年に経験したStage IV乳癌51例を対象に,手術先行実施その後薬物治療群N=11(22%)薬物療法先行手術実施群N=24(47%),手術未実施薬物治療のみ群N=16(31%)の3群に分け,治療成績,予後因子などを比較検討した.結果:3群間の治療成績(50%生存期間)は観察期間中央値60カ月において,手術先行群27.2カ月,薬物療法先行手術群37.8カ月,手術未実施群29.3カ月(p=0.89)と有為差を認めなかった.治療成績を,バイオマーカー,T4/nonT4,N2~N4/N0~N1,内臓器転移の有無,手術実施の有無,手術方法,薬剤反応について多変量解析した結果,トリプルネガテイブ(p=0.01)と臓器転移(p=0.0001)が予後不良因子に挙がった.手術実施の有無は有意差を認めなかった(p=0.17).結論:Stage IV乳癌の原発巣手術は,治療成績の改善には至らなかった.予後因子も参考にし,手術適応は慎重に選択すべきと考えられた.

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