日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
動脈切開部からのICG蛍光血管造影で腸管温存した上腸間膜動脈塞栓症の1例
松永 裕樹志水 祐介下園 麻衣山川 潤大倉 淑寛濱邉 祐一
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 82 巻 2 号 p. 395-398

詳細
抄録

症例は80歳,女性.心窩部不快を主訴に当院に転送された.腹部造影CTで上腸間膜動脈塞栓症,小腸虚血があり,緊急手術を施行した.上腸間膜動脈を切開し,血栓除去バルーンカテーテルで赤色血栓を摘出した.中枢側の血流は良好だったが,末梢側からの血液流出がなかったため,血流改善不良が疑われた.残存血栓の有無を確認するために,切開した動脈にカテーテルを挿入し,indocyanine green(ICG)蛍光血管造影を実施した.上腸間膜動脈本幹と空腸から回盲部の造影は良好だった.血栓摘除しえたと判断し,切開した血管を縫合閉鎖した.一時的閉腹とし,翌日に腸管の性状を確認して閉腹した.良好な食事摂取を確認して,術後20病日に自宅退院とした.上腸間膜動脈塞栓症に対して,切開した動脈内に挿入したカテーテルよりICG蛍光血管造影検査を実施し,腸管を温存しえた1例を経験したので報告する.

著者関連情報
© 2021 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top