2021 年 82 巻 2 号 p. 399-403
症例は97歳の女性.多発脳梗塞,Alzheimer型認知症の既往があり,経口摂取はどうにか可能だが寝たきりの状態であった.食欲低下で入院したが,経過観察中に下血を認めた.CTで小腸にtarget signとその口側腸管の拡張を認めた.小腸重積の診断で,緊急開腹手術を施行した.開腹すると,回盲弁から40cmの回腸が重積していた.整復困難であり,回腸を部分切除して吻合を行った.重積した回腸は多発性に菲薄化しており,一部に穿孔,壊死を認めた.術後は,循環不全で術後2日目まで集中治療室での加療を要した.4日目より経口摂取困難に対して経管栄養を導入し,23日目に退院した.病理所見では特発性小腸重積の診断であった.成人発症の本例は比較的稀であり,本邦報告においては最高齢であったものの手術で救命しえた1例を経験したので報告する.