2021 年 82 巻 2 号 p. 404-409
症例は71歳の男性で,2カ月前から右鼠径部に直径約1cmの無痛性の腫瘤を認めていたが,徐々に増大したため当院を受診した.来院時,右鼠径部に鶏卵大の腫瘤を硬く触れ,用手還納はできなかった.超音波検査(US)では大腿静脈の内側に腹腔から連続する径約2.5cmの嚢状構造物を認め,その中に盲端に終わる細長い管腔構造物,網状領域,無エコー域を認め,それぞれ大腿ヘルニア内の虫垂,大網,腹水と診断した.また,カラードップラー法では虫垂先端付近には血流シグナルを認めず,虫垂壁の一部に欠損を認めたため,虫垂穿孔が疑われた.US診断の25時間後に手術を行った.虫垂は穿孔を認めたので切除し,大腿ヘルニアはMcVay法で修復した.自験例ではUSによってDe Garengeot herniaの診断だけでなく,同時に虫垂炎の穿孔も診断できた.