2021 年 82 巻 2 号 p. 410-414
症例は身長184cm,体重192kg,Body Mass Index(以下BMI)56.7kg/m2と高度肥満の42歳の男性である.4日前からの腹痛で前医を受診した.抗菌薬治療が行われたが,改善しなかったため当院受診となった.血液検査ではWBC 10,800/μl,CRP 20.35mg/dlと高度な炎症所見を認めた.腹部CTでは虫垂の腫大と膿瘍形成を疑う所見が見られた.急性虫垂炎による限局性腹膜炎と診断し,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.ランプ体位をとり,陰圧型体位固定具や固定支持器を使用して体を固定した.第1ポートは臍上10cmの左腹直筋経由にてオプティカル法で挿入した.気腹圧を15mmHgとし,ポートを追加することで視野確保を行った.炎症が波及した脂肪垂と虫垂との区別が困難であったため,術中迅速病理検査を行い,切除組織が虫垂であることを確認した.術後経過は良好で,術後10日目に軽快退院となった.今回,BMI 56.7kg/m2の高度肥満患者の急性虫垂炎に対して,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した1例を経験したため報告する.