2021 年 82 巻 2 号 p. 415-421
消化管異物の多くは自然排泄され,消化管穿孔などの合併症を生じる頻度は1%以下といわれているが,消化管穿孔・穿通を生じた場合,腹膜炎を発症したり腹腔内膿瘍を形成することがある.今回2016年1月から2017年9月までに,当院にて魚骨により下部消化管穿孔または穿通により加療を行った3例について検討した.平均年齢90.3歳,男性2人,女性1人.魚骨の穿孔・穿通部位はすべてS状結腸で,全例急性炎症型であった.1人は汎発性腹膜炎を呈していたため緊急手術を施行したが,2例は腹部所見が限局しており内視鏡下の摘出,保存的治療にて治療した.汎発性腹膜炎を呈した症例も,開腹所見では混濁した腹水を少量認めたのみで,穿孔部も小さかったため単純閉鎖,洗浄ドレナージ術のみ施行した.以上の経験から,急性腹症の鑑別疾患として魚骨の穿孔・穿通は念頭に置くべき疾患であり,魚骨の穿孔・穿通が疑われる症例であっても腹部所見が限局している場合は,保存的治療が可能な場合もあり,汎発性腹膜炎を呈していても急性期であれば侵襲の少ない手術にて治療が可能である場合もあることを考慮すべきと思われた.