日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔鏡下脾彎曲部結腸癌切除後に発症した吻合部肛門側慢性虚血性腸炎の1例
垣生 恭佑赤本 伸太郎小西 祐輔福原 哲治中川 和彦石川 亮
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2021 年 82 巻 2 号 p. 434-440

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抄録

症例は61歳,男性.脾彎曲部横行結腸癌に対して,腹腔鏡下脾彎曲部結腸部分切除術,D3郭清を施行した.動脈系の血管処理は中結腸動脈左枝と左結腸動脈で行い,下腸間膜動脈は温存し,静脈系は下腸間膜静脈を処理した.最終病理は,fT3N1M0 fStage III a(大腸癌取扱い規約第8版)であった.術後補助化学療法でUFT/UZELを5コース施行した.初回手術後1年7カ月頃より,腹痛,腹部膨満,嘔気が出現し,精査の結果,慢性虚血性腸炎と診断した.2カ月半保存的加療を行うも改善せず,用手補助腹腔鏡下壊死腸管切除,横行結腸-直腸吻合,diverting ileostomyを施行した.病理組織学的には,粘膜固有層から粘膜下層にかけての壊死や,静脈の壁肥厚,細血管の増生が見られた.術後3カ月目で,人工肛門閉鎖術を施行した.2年経過現時点で経過良好である.下腸間膜動脈を温存し,左側結腸のdrainage veinである下腸間膜静脈を切離したことで腸管鬱血を生じ,慢性虚血性腸炎を生じたと考えられた.

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