2021 年 82 巻 2 号 p. 460-465
症例は63歳,男性.開腹手術歴なし.左橈骨遠位端骨折と左仙骨翼骨折で整形外科に入院し橈骨骨折の手術を受けた.術後11日目に腹痛を訴え,術後14日目に腹部骨盤造影CTで腸閉塞の診断で外科へ紹介された.軽度の腹部膨満を認めたが,鼠径部の膨隆や筋性防御は認めなかった.腹部骨盤造影CTでは左腹直筋背側で,頭側にヘルニア門を有する嚢状の小腸ループが膀胱を圧排していた.絞扼性腸閉塞と診断し,緊急手術を行った.下腹部正中切開で開腹すると,左膀胱上窩の小孔に小腸が嵌頓していた.ヘルニア門は示指頭大で,腸管の嵌頓長が約7cmであった.腸管切除はせず,2-0吸収糸でヘルニア門を縫合閉鎖した.術後経過は良好であった.内膀胱上窩ヘルニアは,小腸ループによる膀胱圧排のCT所見が術前診断に有用とされる.自験例は術前診断には至らなかったが,特徴的なCT所見を示す内膀胱上窩ヘルニアであることから,文献的考察を加え報告する.