2021 年 82 巻 6 号 p. 1070-1075
症例は78歳,女性.左乳房のしこりを主訴に前医を受診し,乳房腫瘤の疑いにて当科へ紹介受診となった.初診時,触診上左乳房AC領域に30mm大の腫瘤を触知した.超音波検査にて同部位に大きさ33×28×18mmの境界明瞭,内部不均一な分葉状低エコー腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診を施行した.細胞診所見では葉状腫瘍と診断されたため,腫瘍縁より約1cmの安全域をとり,乳房部分切除術を施行した.術後の病理組織検査では粘液線維肉腫と診断され,放射線治療を施行した.術前に葉状腫瘍と胸壁発生の肉腫との病理学的な鑑別が困難な場合がある.今回,術前に乳腺葉状腫瘍と診断された粘液線維肉腫の1例を経験したので報告する.