日本臨床外科学会雑誌
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症例
オラパリブにより病状の安定が得られたホルモン陽性再発乳癌の1例
山口 あい太治 智愛諏訪 裕文
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2021 年 82 巻 6 号 p. 1084-1088

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抄録

肝・脳・肺転移を有する再発乳癌に対して,オラパリブにより病状が安定した症例を経験したため報告する.39歳時に左乳癌,T1N1M0,luminal type,43歳時に右乳癌,T1N0M0,luminal type,45歳時に右腋窩リンパ節再発をきたし,その2年後に肝・傍胸骨リンパ節転移を認めた.ホルモン療法を2レジメン行ったが,再発から1年9カ月後に脳・肺転移出現と肝転移の増大を認めた.脳転移に放射線治療を行い,経口抗癌剤を投与した.BRCA2変異を認め,四次治療としてオラパリブを投与した.投与経過中に悪心,食欲低下,倦怠感(Grade1),好中球減少(Grade2)を認めたが,減量は不要であった.通院は月1回のみで,自宅での家事や育児も以前と同様に行うことができた.転移病変の増悪を認めず,1年2カ月経過している.オラパリブは長期投与の忍容性が高い治療選択肢である.再発乳癌においては進行した状況であっても積極的にBRCA1/2変異の有無を検索し,オラパリブの投与を検討すべきである.

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