日本臨床外科学会雑誌
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症例
外傷を契機に診断され緊急手術を行った脾嚢胞破裂の1例
渡辺 裕諸原 浩二保田 尚邦家田 敬輔大澤 秀信
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キーワード: 脾嚢胞, 外傷性脾損傷
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2021 年 82 巻 6 号 p. 1206-1210

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抄録

症例は15歳,男性.自転車で転倒直後に四肢擦過傷を主訴に来院した.来院時にバイタルサインや腹部所見に異常なく,顔面四肢の擦過傷のみで,腹部・背部を含め体幹に外傷性変化は認めなかった.帰宅後約4時間後に心窩部痛が突然出現したため再び来院した.来院時に血圧低下を認めており,造影CTを施行すると腹腔内には多量の腹水を認め,脾上極に8cm大の嚢胞と造影剤の漏出像を認めた.急速輸液を行うも循環動態の安定が得られず,緊急開腹手術を施行した.脾上極に破裂した嚢胞,並びに動脈性出血を伴う実質損傷を認めた.脾摘後は重症感染症のリスクが上昇するため,脾部分切除術(脾天蓋切除術)を施行した.術後経過は良好で,18病日に退院した.本症例は脾損傷の大部分が嚢胞成分であったため,脾の大部分を温存することができた.今回,外傷を契機に診断され緊急手術を行った脾嚢胞破裂の1例を経験したので報告する.

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