2021 年 82 巻 6 号 p. 1253-1258
症例は65歳,男性.5年前の健診で尿蛋白を指摘され,腎生検による精査は行わず内服加療のみ行っていたが,2年間で通院を自己中断した.2カ月前より腹部腫瘤を自覚していたが,腫瘤周囲に強い痛みを自覚したため当院を受診した.CT画像で著明な腹水貯留と小腸嵌頓を伴う上腹部の白線ヘルニアを認め,徒手整復困難であったため緊急手術を施行した.手術後より低アルブミン血症,腹水,浮腫に対し利尿剤投与を開始し,腎生検で足細胞陥入糸球体症と診断された.その後,初回手術から1カ月後に右閉鎖孔ヘルニア嵌頓の診断で緊急手術を施行し,さらに4カ月後に左閉鎖孔ヘルニア嵌頓の診断で緊急手術を施行した.術中所見で左鼠径ヘルニアも認め,同時修復を行った.その後,右鼠径ヘルニアと左鼠径ヘルニア再発を認め,根治術を施行した.白線ヘルニアと両側閉鎖孔ヘルニア,両側鼠径ヘルニアを同時期に発症した非常に稀な症例を経験したため報告する.