2021 年 82 巻 9 号 p. 1648-1652
症例は68歳,男性.下腹部に11mm大の紅色結節を認め,近医皮膚科を受診.生検を施行し,原発不明のneuroendocrine carcinomaの診断であった.CTで縦隔肺門部リンパ節の腫脹を認め,VATS(video assisted thoracic surgery)生検を施行し同様の組織所見であった.原発不明癌の精査加療目的に当院へ紹介となった.組織標本の免疫染色でCD56(+),ChromograninA(+),Synaptophysin(+),ER(+),PgR(+),HER2(-),MIB-1 10-20%の結果であり,乳腺原発が疑われたため当科へ紹介となった.視触診,マンモグラフィ,超音波で,乳腺内・腋窩リンパ節には明らかな所見を認めず,CTで肺動脈周囲リンパ節腫大・右鼠径部リンパ節腫大を認めるのみであった.PET(positron emission tomography)では肺動脈周囲リンパ節・右鼠径部リンパ節に集積を認めるものの,他に原発を示唆する所見は明らかではなかった.潜在性乳癌の皮膚転移,肺動脈周囲リンパ節・右鼠径部リンパ節転移の診断でタモキシフェン内服を開始した.現在タモキシフェン内服し4年となるが,再燃を認めていない.男性乳癌の罹患率は女性患者の0.5%程度であり,さらに男性の潜在性乳癌は症例報告が数例あるのみで極めて稀な病態である.今回われわれは,遠隔転移のみ認めた男性潜在性乳癌を経験したため,文献的考察を交えて報告する.