2022 年 83 巻 1 号 p. 61-67
症例は68歳,女性.29年前に左乳癌に対して左乳房切除術を施行された.3年前から嚥下困難感を自覚,以後近医で食道狭窄に対してバルーン拡張術を繰り返し受けていたが,症状が改善せず経口摂取不可能となった.内視鏡下食道粘膜生検では悪性所見は認めなかったが,CTで胸部食道の全周性壁肥厚と椎体の硬化性変化を指摘され,骨生検で乳癌の骨転移と診断された.乳癌食道転移の可能性を考え,超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診を施行し病理組織検査で骨生検の所見と一致したため,乳癌食道転移と診断した.食道ステント留置術を行い,乳癌に対する薬物治療を開始した.乳癌の既往がある食道狭窄症例では,乳癌食道転移の可能性を考慮して全身の転移検索を行う必要があり,超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診は診断に有用である.