2022 年 83 巻 12 号 p. 2098-2102
症例は32歳の男性で,左鼠径部の違和感と疼痛を主訴に受診した.腹部CTで左鼠径ヘルニアと診断し,腹腔鏡手術を施行した.腹腔内を観察すると,明らかなヘルニア嚢はなかったが,体表から左鼠径部を圧すると,精索脂肪腫が内鼠径輪から腹腔内へ突出する様子が認められた.精索脂肪腫が症状の原因であったと判断し,そのまま腹腔鏡下に摘出した.内鼠径輪の開大も認めたため,外鼠径ヘルニアに対する腹腔内アプローチ法に準じてメッシュ(Bard 3D Max®)を留置し,手術を終了した.術後,患者の自覚症状は改善した.ヘルニア嚢を伴わない精索脂肪腫が鼠径ヘルニア様の症状を呈することがあり,sacless sliding fatty inguinal herniaと呼称されている.精索脂肪腫は鼠径部切開法による鼠径ヘルニア手術においては頻繁に認める所見だが,腹腔鏡下ヘルニア修復術では指摘することが難しく見落とされることがあり,注意が必要である.