日本臨床外科学会雑誌
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症例
術中ICG蛍光法により腸管を温存した肝鎌状間膜裂孔ヘルニア嵌頓の1例
油木 純一木田 睦士児玉 創太大惠 匡俊八木 俊和来見 良誠
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2022 年 83 巻 3 号 p. 580-584

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抄録

肝鎌状間膜裂孔ヘルニアの嵌頓を経験したので報告する.当院ではインドシアニングリーン(indocianine green:以下,ICG)を用いて赤外光を観察するICG蛍光法を使用している.特に,内視鏡画像上で評価可能な装置を使用しており,小開腹することなく嵌頓小腸の血流を評価して腸管切除を回避可能であった.

症例は53歳,女性.数時間前に上腹部痛を認め,疼痛が増悪したため救急外来を受診した.精査の結果,肝鎌状間膜裂孔ヘルニアの嵌頓と診断し,腹腔鏡下に緊急手術を施行した.嵌頓した小腸は用手的に解除可能であったが壊死が否定しきれないため,ICG蛍光法で血流を確認した.直動脈と嵌頓小腸全体に発光を認めたため,小腸を温存した.術後経過は良好で,6日目に退院の運びとなった.

内視鏡用のICG蛍光法は内視鏡画像上で血流を評価可能であり,腹壁の小切開を通して嵌頓腸管を腹腔外へ牽引する必要がなく,有用な方法と考えられる.

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