日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹部コンパートメント症候群をきたし血腫除去を行った特発性後腹膜血腫の1例
鯨井 大松本 健司篠崎 浩治
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2022 年 83 巻 3 号 p. 575-579

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抄録

特発性後腹膜血腫は後腹膜出血のうち,外傷,医療行為,腹部大動脈破裂などの原因を認めないものを言い,抗血栓療法の稀な合併症である.今回われわれは,特発性後腹膜血腫による腹部コンパートメント症候群に対して血腫除去を行い,良好に経過した1例を経験したため報告する.症例は41歳の男性で,ショック状態で当院に搬送された.腹部造影CTで右後腹膜に巨大な血腫を認め,緊急で経カテーテル的血管塞栓術が施行された.入院後,集中治療室で全身管理が行われたが腹腔内圧と血清クレアチニン値が低下せず,第10病日に当科コンサルトとなった.腹部コンパートメント症候群と診断し緊急手術で血腫除去を行ったところ,腹腔内圧は低下し透析を離脱し,第37病日に独歩退院となった.特発性後腹膜血腫による腹部コンパートメント症候群では,外科的な血腫除去により良好な治療効果が期待できると考えられた.

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