2022 年 83 巻 5 号 p. 925-930
症例は80歳,男性.肛門痛を主訴に近医を受診し,肛門部腫瘤を指摘され当院へ紹介受診となった.肛門縁12時方向から会陰にかけて60×25mm大の硬結を伴う皮膚腫瘤を認め,CTでは造影効果のある充実性腫瘤像を呈していた.生検でMichaelis-Gutmann body(以下MG小体)を有する組織球の集簇を認めマラコプラキアの診断となり,腫瘤辺縁を切離ラインとし,切除した.術後7カ月後に右鼠径部の腫瘤を主訴に再受診し,CTで前回の肛門部に類似した充実性腫瘤像を認めた.腫瘤は自壊し排膿を認め,確定診断とQOL改善の目的で右鼠径部腫瘤摘出術を行った.病理組織検査でAB-PAS染色および鉄染色で陽性所見を示すMG小体を多数認め,マラコプラキア再発の診断に至った.本疾患が肛門部に発症すること自体が稀であり,これまでに本邦で異所性再発した報告は無い.今回,鼠径部に異所性再発した肛門マラコプラキアの症例を経験したので報告する.