日本臨床外科学会雑誌
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症例
COVID-19ワクチン接種後に発症し脾臓摘出を行ったITPの1例
伊藤 貴明新井 利幸植村 則久塚原 哲夫山下 浩正雨宮 剛
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キーワード: COVID-19, ITP, 脾臓摘出
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2022 年 83 巻 5 号 p. 931-936

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抄録

免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)はCOVID-19ワクチン接種の稀な合併症として報告されている.

症例は50歳,女性.2回のCOVID-19ワクチン接種の2週間後に過多月経で近医を受診し,血小板減少を指摘され当院を紹介.血小板数1,000/μL,網状赤血球数は増加し,赤血球数は減少.骨髄検査では巨核球は軽度増加のみが指摘された.Helicobacter pylori感染を認めなかった.造影CTでは脾腫や側副血行路を認めなかった.ITPと診断しステロイド治療(デキサメサゾン大量療法40mg/dayおよびプレドニゾロン25mg/day)を実施したが,血小板数は2,000/μL,5,000/μLで効果が認められず,脾臓摘出の方針とした.術前にガンマグロブリン(20g/day 5日間)とトロンボポエチンが投与されたが血小板数が23,000/μLであったため,血小板輸血後に腹腔鏡下脾臓摘出術を実施し,術中・術後合併症なく経過した.術後2カ月で血小板数は75,000/μLで安定した.

COVID-19ワクチン接種後のITPに対し,脾臓摘出術が有効であった1例を経験したので報告する.

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© 2022 日本臨床外科学会
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