日本臨床外科学会雑誌
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症例
胆嚢頸部嚢胞の1例
周東 宏晃菅又 嘉剛多賀谷 信美奥山 隆吉富 秀幸
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2023 年 84 巻 10 号 p. 1673-1678

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抄録

今回,われわれは胆泥を伴う胆嚢炎で摘出した胆嚢頸部に嚢胞が認められた非常に稀な症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.症例は78歳の男性で,受診当日の朝食摂取後に軽度の上腹部痛を自覚し,当科受診となった.来院時血液検査で総ビリルビン1.5mg/dL,AST 63U/L,ALT 47U/L,CRP 1.3mg/dLと,肝胆道系酵素の上昇とCRP上昇を認めた.また,腹部超音波検査で胆嚢壁の肥厚,胆嚢内に胆泥を認め,頸部にRokitansky-Aschoff sinusの拡張と思われるcystic areaを認めた.CTでは,胆嚢は軽度の壁肥厚と腫大を認め,胆泥を伴う急性胆嚢炎と胆嚢腺筋腫症の診断にて,腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.切除胆嚢を開放すると,頸部に10mm弱の粘液性の内容物を含む嚢胞を認めた.病理組織検査では,嚢胞は嵌入した腺管が拡張したもので,悪性所見は認めなかった.胆嚢嚢胞は稀であり,本邦での報告例は自験例を含め17例のみであるが,癌の発生を考慮すると嚢胞の拡大に注意しながら経過観察し,手術の時期を逃さないことが重要である.

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