2023 年 84 巻 4 号 p. 608-614
一般に,腹腔内遊離ガス像は消化管穿孔を伴うことから緊急手術の重要な判断基準の一つとして考えられている.しかしながら,腹腔内遊離ガス像を認めるものの消化管に明らかな穿孔所見が認められないものや,最終的にその原因が不明であったと判断せざるを得ない特発性気腹症という病態が頻度は少ないながらも存在する.今回,われわれはS状結腸過長症が発症に関与したと考えられた特発性気腹症の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
症例は84歳,男性.腹痛を主訴に来院し,画像所見で腹腔内遊離ガス像を確認した.炎症所見は軽微であったが腹膜刺激症状を認めたことから,消化管穿孔を疑い緊急手術を行った.しかし,明らかな穿孔箇所は認められず,特発性気腹症と診断した.S状結腸過長症が併存しており結腸が著明に拡張していたことから,腸管壁の機能障害をきたしたことや腸管内圧の上昇が特発性気腹症の発症に関与しているものと考えられた.