2023 年 84 巻 5 号 p. 752-757
妊娠中の急性虫垂炎に対する腹腔鏡下虫垂切除術の報告が散見されてきたが,妊娠後期の症例に対するものは少ない.患者は妊娠30週の妊婦で,急性虫垂炎の診断で当科に紹介された.術中体位とポート配置を工夫し,子宮に影響を及ぼすことなく安全に手術を完遂できた.自験例では妊娠後期の症例に対しても腹腔鏡下手術が有用である可能性が示唆されたが,穿孔性虫垂炎や膿瘍形成をきたすような高度炎症例においては,増大した子宮によって術野の確保が困難となり,腹腔内洗浄による感染コントロールが不十分となることが危惧される.症例によっては危険回避のため開腹手術へ移行することを念頭に置き,腹腔鏡下手術を遂行することが望ましいと考える.