2023 年 84 巻 6 号 p. 935-940
症例は53歳,女性.右鼠径部の膨隆と疼痛を主訴に産婦人科を受診した.精査の結果,鼠径ヘルニア嵌頓を疑われ,当科を紹介され受診した.腹部超音波検査と腹部造影CTで,鼠径部に造影効果を有する直径3cmの腫瘤と回盲部へ連続する索状構造物を認め,ヘルニア内容が虫垂である鼠径ヘルニアまたは鼠径部腫瘤と診断し,腹腔鏡下手術を施行した.腹腔鏡による観察ではヘルニアは認めず,鼠径部切開法で腫瘍摘出術を施行した.子宮円靱帯に連なる腫瘍であったため,子宮円靱帯原発腫瘍と診断した.病理組織学的検査では紡錘状の平滑筋組織が錯綜する像を認め,子宮円靱帯平滑筋腫と診断した.今回われわれは,鼠径部ヘルニアとの鑑別に難渋した子宮円靱帯原発平滑筋腫の1例を経験した.子宮円靱帯原発の平滑筋腫は非常に稀な疾患であるが,女性の鼠径部ヘルニアを疑った際に,子宮筋腫の既往がある鼠径部腫瘤性病変であった場合は鑑別疾患として念頭に置くべきであり,鼠径部ヘルニアとの鑑別目的に腹腔鏡下手術が有用であると考えられた.