2024 年 85 巻 1 号 p. 48-52
症例は71歳,男性.直腸癌の診断で,腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術が施行された.病理結果でpT3N1M0,Stage IIIbの診断となり,術後補助化学療法(CapeOX療法)が開始となった.化学療法開始後9日目に下痢のため休薬し,17日目に当院を受診し,化学療法に伴う感染性腸炎の診断で入院となった.保存的加療により改善を認めるも腸炎の再燃を繰り返し,恒常的に通過障害を認めるため手術の方針となった.術前のClostridioides difficile(CD)トキシンは陰性であった.病変は回腸に限局しており,小腸部分切除術を施行した.切除標本の病理組織検査結果で,粘膜表層に偽膜の形成を認めており,偽膜性腸炎と診断された.術後経過良好で,術後14日目に退院となった.偽膜性腸炎が小腸に発症した症例は比較的稀であり,さらに化学療法投与が契機となったと考えられたことや,手術を要した症例はさらに稀であり,今回,文献的考察を加えて報告する.