2024 年 85 巻 8 号 p. 1007-1011
症例は53歳の女性.下肢の動かしにくさを自覚し,徐々に進行し自宅での生活が困難になったため,当院救急外来を受診した.頭部MRIでは明らかな異常は認められなかったが,その後も症状は改善せず,当院神経内科を受診した.歩行困難・構音障害・水平性眼振などが出現しており,同日精査入院となった.CTで左乳房に2cm大の腫瘤と左腋窩に腫大リンパ節を認め,乳癌の疑いで精査加療のため当科を紹介受診した.同部位の吸引式組織生検にて浸潤性乳管癌,腋窩リンパ節の細胞診では転移陽性,血液検査で抗Yo抗体陽性が判明し,傍腫瘍性小脳変性症(paraneoplastic cerebellar degeneration;PCD)を呈した乳癌の診断で,左乳房切除+腋窩郭清(レベルI・II)を施行した.pT2N2M0,Stage IIIA,ER(弱陽性),PgR(-),HER2(3+),Ki-60 60-70%の診断で,その後ステロイドパルス療法,抗HER2療法,免疫グロブリン大量静注療法,シクロホスファミドパルス療法を行い,失調症状や構音障害が徐々に改善した.