2024 年 85 巻 8 号 p. 1040-1045
本邦における食道憩室の頻度は1.6%程度であり,食道憩室内癌はその0.6%に発生する稀な疾患である.横隔膜上憩室は仮性憩室であり固有筋層を欠くため,憩室内に発生した癌は周囲に浸潤しやすく症状に乏しいため,進行癌で発見され予後不良となりやすい.症例は72歳,女性.検診で横隔膜上憩室を指摘され定期検査を受けていた.6年後,上部消化管内視鏡検査で同憩室内に20mm大の0-IIb病変を認めた.生検で扁平上皮癌が検出され,cT1a-EP/LPM,N0,M0,cStage0と診断した.内視鏡的切除も検討されたが,慢性咳嗽や逆流性食道炎症状を有し,腫瘍辺縁が憩室開口部に近接していたため,外科的切除の方針とした.胸腔鏡下食道亜全摘術,2領域郭清,亜全胃胃管再建術を施行し,R0切除を得た.病理診断はpT1a-MM,N0,M0,fStage0であった.今回われわれは,横隔膜上食道憩室を定期観察し,憩室内癌を早期に発見することで外科的根治切除が可能であった症例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.