2024 年 85 巻 9 号 p. 1264-1270
筋強直性ジストロフィーは筋強直現象,筋力低下,筋委縮を中心に,中枢神経症状,内分泌異常,心筋伝導障害,白内障など多彩な症状を呈する緩徐進行性の常染色体優性遺伝の疾患である.確定診断には遺伝子検査を要するが,倫理的問題から臨床所見より診断されることも多い.今回,全身麻酔下手術を契機に未診断の筋強直性ジストロフィーの症状が顕在化して呼吸不全に至った直腸癌の1例を経験したので報告する.本症例は術後に著明な嚥下機能低下および咽頭部感覚低下をきたし,リハビリでの改善が得られず気管切開術および胃瘻造設を要した.筋強直性ジストロフィーは緩徐進行性で無症状・無自覚のことも多く,術前に無症状でも術後に症状が顕在化すると,術後管理に難渋する.臨床症状や家族歴など特徴的な所見があるため,術前に疑われた場合には,筋強直性ジストロフィーを念頭に置いた診察や説明を十分に行い,多職種と連携した慎重な対応が肝要と考える.