2025 年 86 巻 1 号 p. 15-19
症例は75歳,男性.3年半前からの左乳房腫瘤とその増大を自覚し,近医皮膚科を受診.部分切除生検により左乳癌と診断され,精査加療目的に当科を紹介受診した.精査の結果,腺様囊胞癌,Stage Iと診断し,左乳房全切除,センチネルリンパ節生検を施行した.術後の病理組織学的診断は腺様囊胞癌,pT2N0M0 Stage IIA,トリプルネガティブであった.術後薬物療法は施行せず経過観察の方針とし,現在,術後1年9カ月,無再発生存中である.
腺様囊胞癌は特殊型乳癌で,サブタイプはトリプルネガティブであることが多いが,非常に予後が良好であり,腋窩リンパ節転移がなければ周術期薬物療法は施行しなくてよいとされる.発生頻度は全乳癌の約0.1%とされ,特に男性における腺様囊胞癌の報告は非常に少なく,その性質や治療方針の検討には症例の集積を要する.今回われわれは,男性乳腺に発生した腺様囊胞癌を経験したので文献的考察を加え報告する.