2025 年 86 巻 10 号 p. 1297-1300
症例は76歳,女性.ホルモン受容体陽性,HER2低発現(Score 1)の左乳癌の術後6カ月で脱力および食思不振を主訴に入院となり,頭部造影MRIで癌性髄膜炎と診断された.Trasutsuzumab-deruxtecan(T-DXd)を2コース施行したところ画像上癌性髄膜炎は消失し,症状も改善した.近年,HER2陽性乳癌における癌性髄膜炎をはじめとした活動性中枢神経系転移のT-DXdのエビデンスは次々と誕生しているが,HER2低発現における同様のエビデンスはまだ乏しい.われわれは,HER2低発現,しかも予後不良とされる癌性髄膜炎に対して放射線療法を行わずにtrasutsuzumab-deruxtecanが単独で奏効した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.