2025 年 86 巻 3 号 p. 401-405
症例は88歳の男性.腹痛を主訴に前医に救急搬送となり,腹部CTで下行結腸の壁肥厚と周囲脂肪織濃度の上昇を認め,虚血性腸炎の診断となった.入院後に腹痛の増悪と下血が出現し,造影CTにて横行結腸からS状結腸に造影効果の低下を認め,壊死型虚血性腸炎の疑いで当院に紹介となった.当院来院時,腹部は板状硬であり血中乳酸値の上昇を認めたため,緊急手術を行った.腹腔鏡で観察すると,結腸は浮腫状であったが漿膜面に壊死を疑う所見は認めなかった.Indocyanine green(以下,ICGと略記)蛍光法では腸管の血流が保たれており,腸切除は不要と判断した.術後経過は問題なく10日目に退院となった.壊死型虚血性腸炎は緊急手術の適応であるが,術前診断が難しく手術の判断に苦慮する症例は多い.腹腔鏡下ICG蛍光法による腸管血流の評価は最小限の侵襲で腸切除の要否を判断でき有用であったため,文献的考察を加えて報告する.