2025 年 86 巻 3 号 p. 450-455
症例は86歳の男性で,既往にコントロール不良の喘息があった.喘息発作で当院を受診し,吸入薬で発作が消失した後,右鼠径部膨隆と心窩部痛を自覚した.腹部CTにて右大腿ヘルニアに虫垂の嵌頓を認めた(de Garengeot hernia).軽症の虫垂炎を認め,抗菌薬による保存的治療を先行した.大腿ヘルニアは容易に再発したため,虫垂炎の治癒後に,脊椎麻酔下で鼠径部切開法によるヘルニア修復術を施行した.重度の混合性換気障害があり耐術能が不良であったため,虫垂切除は行わなかった.現在に至るまで,虫垂炎の再燃は認めていない.自験例のように軽症の虫垂炎の場合,大腿ヘルニア嵌頓に伴う物理的な虫垂内腔の閉塞が解除されれば保存的治療が奏効し,必ずしも虫垂切除を必要としない可能性が示唆された.虫垂炎の重症度,保存的治療の成否を考慮し,当院におけるde Garengeot herniaの治療方針をまとめた.