2025 年 86 巻 5 号 p. 632-638
虚血性腸炎は血管側因子(動脈硬化,血栓等)と腸管側因子(便秘,下痢による腸管内圧上昇)が相乗的に作用し,腸管の血流障害を引き起こす疾患であり,通常は保存的治療で改善が見られる.今回,下腸間膜動静脈奇形が原因で難治性の虚血性大腸炎を発症し,偶発的にS状結腸癌を認め外科的治療を要した1例を経験した.症例は66歳の男性.継続する下痢・腹痛を主訴に受診し,虚血性腸炎の診断で保存的加療を行った.改善が乏しく,CTと血管造影検査で下腸間膜動静脈奇形を認めた.血管内治療は腸管虚血の悪化が懸念された.下部消化管内視鏡検査で脾彎曲結腸から直腸にかけて浮腫が残存し,S状結腸に早期癌を認めた.以上から下腸間膜動静脈奇形による虚血性腸炎,S状結腸癌(cT1bN0M0 cStage I)の診断で開腹Hartmann手術,D2郭清を施行した.術後は症状の再燃なく経過しており,難治性虚血性腸炎の原因として下腸間膜動静脈奇形を考慮し,外科的根治術を検討する重要性が示唆された.