2025 年 86 巻 8 号 p. 1060-1064
症例は47歳の男性.慢性腎不全で4カ月前から腹膜透析(peritoneal dialysis;以下,PDと略記)が開始された.生体腎移植前のスクリーニング目的に施行された下部消化管内視鏡検査で,SD-junction付近の結腸に深達度M~SM程度の早期癌を指摘された.非PD患者であれば内視鏡的切除も考慮される病変であったが,PD患者に対する内視鏡的治療は腹膜炎のリスクが高いと判断され,手術目的に当科へ紹介された.術前診断は,S状結腸癌または下行結腸癌(cTis~cT1,N0,M0,cStage 0 or I)で,腹腔鏡補助下結腸部分切除術を行った.術翌日にブラッドアクセスカテーテルからの血液透析を開始し,術後9日目にPDを再開した.PDは問題なく施行可能であり,術後11日目に退院した.日本透析医学会より腹膜透析ガイドラインが刊行されているが,PD患者に対する腹部手術の周術期管理方法の記載はない.PD療法中の大腸癌手術に関して,周術期管理法を中心に文献的考察を加えて報告する.