2025 年 86 巻 8 号 p. 1065-1069
症例は61歳,男性.頭部外傷で入院し,開頭術後,寝たきりの状態であった.食事開始後より便秘と腹痛が続いていたが,腹痛増悪と血圧低下が出現した.血液検査で炎症反応の上昇と代謝性アシドーシスを認め,CTでS状結腸遠位側に多発憩室と壁肥厚を認め,同部より口側の結腸は著明に拡張していた.腫瘍による腸閉塞を疑い,減圧目的に下部消化管内視鏡検査を行ったところ,S状結腸憩室炎による狭窄が原因の閉塞性大腸炎の診断となり,緊急手術を施行した.S状結腸遠位側は腫瘤状に硬く短縮し,S状結腸近位側から下行結腸は暗赤色かつ浮腫状であり,まず結腸左半切除を行った.切除断端にびらんや潰瘍を認めたため,結腸右半切除と回腸部分切除を追加し,回腸に単孔式人工肛門を造設した.大腸憩室炎に起因する閉塞性大腸炎は稀であるが,高齢化により左側結腸型の慢性憩室炎が増加しており,閉塞の原因として憩室炎も念頭に置く必要がある.