2026 年 87 巻 2 号 p. 216-221
80歳,男性.右腎癌に対して右腎摘出術を施行.術後34年目に腹部エコー検査で膵尾部腫瘤を指摘された.超音波内視鏡検査では膵尾部に10mm大の類円形,境界明瞭な腫瘤性病変を認めた.主膵管との連続性や脾動静脈への浸潤は認めなかった.超音波内視鏡下穿刺吸引法を行い,病理結果から淡明細胞型腎細胞癌の膵転移と診断した.膵転移は孤立性であり,他臓器への転移や膵周囲リンパ節の腫大も認めなかったため,脾動静脈温存を伴う腹腔鏡下脾温存膵体尾部切除術(LSPDP)を施行した.腎癌は根治切除後も長期間を経過して遠隔転移をきたすことがあるが,膵への孤立性転移は切除によって長期生存が期待できる.系統的なリンパ節郭清を行わない場合,LSPDPは低侵襲かつ脾臓温存による免疫機能の維持が可能であり,よい適応であると考えられた.