2026 年 87 巻 2 号 p. 222-227
症例は67歳,男性.左鼠径部膨隆を主訴に来院し,左鼠径ヘルニアの術前診断で,腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(TAPP法)を施行した.術中所見で左内鼠径輪から膀胱後面を通り右背側へ向かう索状物を腹膜下に認めたため,腹膜を切開して観察したところ,正常な左精巣動静脈と左精管に加え,右精巣動静脈と右精管が左鼠径管に進入していた.術中の陰囊触診で左陰囊内に精巣を2個認め,右陰囊内に精巣を触知しなかったことから,交叉性精巣転位(TTE)と診断した.術中の触診・超音波検査で精巣内に腫瘍を疑う所見はなく,泌尿器科と協議し精巣摘除や固定術は不要と判断し,右精索も十分に剥離した上で,メッシュを留置して予定通りTAPP法を完遂させた.術後は再発や合併症はなく経過し,6カ月で終診とした.成人男性のTTEに合併する鼠径ヘルニアに対してTAPP法でのヘルニア修復術を施行した症例の報告は極めて少なく,文献的考察を加えて報告する.