2026 年 87 巻 3 号 p. 308-313
71歳,男性.2023年8月に有鉤義歯を誤飲し,前医で摘出困難だったため当院へ転院となった.CTで胸部上部食道に義歯を認め,誤飲から5日後に準緊急で異物摘出術を行った.全身麻酔導入後に内視鏡による摘出を試みたが,義歯の全体像の把握が困難であり,内視鏡的摘出は困難と判断し,胸腔鏡下の摘出術に変更した.胸部上部食道を切開して義歯を摘出,結節縫合で閉鎖した.術後縫合不全を合併したが保存的に改善し,術後第29病日に自宅退院となった.近年では,食道異物に対する胸腔鏡手術の報告も散見される.鏡視下の食道の縫合操作は食道の長軸方向と術者右手鉗子の方向が直交するため行いにくいが,平行方向へ近づけるように食道をテーピングして右側に牽引する工夫が有用であった.また,縫合不全の回避のためには食道切開部の粘膜端を確実に捉えることが重要である.