2026 年 87 巻 4 号 p. 432-436
症例は62歳,男性.8年前に食道浸潤を伴う噴門部胃癌に対し,胃全摘術および下部食道切除術,Roux-en-Y再建,胸腔内食道空腸吻合を施行した.手術時に左横隔膜脚への腫瘍浸潤を認め,左横隔膜脚の合併切除を行っている.今回,突然の上腹部痛を主訴に救急搬送され,食道裂孔ヘルニア嵌頓の診断となり,同日緊急手術を施行した.開腹時,左横隔膜は肋骨付着部にわずかに認めるのみで,食道裂孔左側は開大しており,腹腔内臓器が胸腔側に脱出していた.小腸の一部が嵌頓しており,同部の整復を行ったが,食道裂孔ヘルニアの修復および横隔膜再建は二期的手術で行うこととした.術後12日目に腹直筋弁を用いた横隔膜再建術を施行し,術後経過は良好で退院となった.術後14カ月現在,再発を認めていない.胃全摘術後に発症した食道裂孔ヘルニアに対して,腹直筋弁による横隔膜再建術を施行し良好な結果を得たので,若干の文献的考察を交えて報告する.