全日本鍼灸学会雑誌
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臨床体験レポート
冷えの改善を伴ったレストレスレッグス症候群の鍼灸治療の一症例
飯田 藍鮎澤 聡櫻庭 陽
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2019 年 69 巻 3 号 p. 210-216

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抄録

【はじめに】慢性的な冷えを伴ったレストレスレッグス症候群 (RLS) 患者に対して鍼灸治療を行い、 良好な経過が得られたので報告する。 【症例】42歳、 女性。 主訴は入眠時に出現する下腿後面のむずむず感。 過去、 妊娠時にむずむず感が出現するも出産後は消失していた。 X年7月誘因なく入眠時に下腿後面にむずむず感が出現。 症状は徐々に増悪し、 入眠障害も伴う。 神経内科にてRLSと診断されるも、 薬物治療を希望しなかったため鍼灸治療を開始した。 【治療及び評価】治療は両側内・外側腓腹筋上に置鍼、 両側承山 (BL57)、 三陰交 (SP6) に電子温灸器を週一回実施した。 評価は国際レストレスレッグス症候群重症度評価尺度 (IRLS)、 Numerical Rating Scale (NRS) を用いた。 【結果】IRLSは初診時26点であったが治療毎に軽減がみられ、 7診目には2点にまで減少した。 NRSも初診時8点であったが、 7診目には0点と改善を認めた。 また、 RLS症状軽減に伴い慢性的に感じていた足部の冷え症状の改善が得られた。 【考察】近年RLSの病態として背後側視床下部のドパミンA11神経の機能的異常が推定されているが、 この系の障害が交感神経系の過緊張を誘発し、 微小循環を障害して冷えの原因となる可能性がある。 【結語】下腿後面のむずむず感を呈するRLSに対し、 下腿部への鍼灸治療で異常感覚の改善と共に冷えの改善が得られた一例を経験した。 RLSと冷えにはドパミン系や自律神経系と関連した共通の病態があり、 鍼灸治療がそれらに作用して症状の改善を促した可能性が示唆された。

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