全日本鍼灸学会雑誌
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報告
先進国における鍼施術制度 第1報
-欧州 (英国、 ドイツ、 フランス) -
安藤 文紀鶴 浩幸北小路 博司
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キーワード: , 調査, 欧州, 法制度, 施術者
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2020 年 70 巻 3 号 p. 250-258

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抄録

【目的】欧州先進国である英国・ドイツ・フランスの鍼の制度や状況を調査し、我が国で鍼が更に発展する課題を検討する。 【方法】2019年に英国・ドイツ・フランスについて、PubMed.gov、scholar.google.com、google.comでacupuncture、regulation、license、education、health insurance、surveyなどのキーワードを用いて英語文献を検索した。 【結果】3国とも医師など医療専門職が医療施設で鍼を行い、条件を満たした医療専門職の鍼は医療保障制度の対象となっていた。英国・ドイツでは非医療専門職が医療制度外で鍼施術をおこなっていた。英国の医療専門職は専門職団体で鍼の教育を受け、非医療専門職は大学などで鍼の専門教育を受け、卒業後は自主規制機関に所属し毎年生涯研修を受けていた。医師は卒後研修としてドイツでは2年、フランスでは3年の鍼教育を受け修了後は資格認定やディプロマ授与がされていた。英国・フランスの医師の教育では、西洋医学として鍼の臨床教育が行われていた。英国医師の鍼の使用率が約60%、ドイツ家庭医の約30%が鍼の認定資格を保有、フランスの医師の2%~34%が鍼を実施する等の報告があった。慢性疼痛保有者の鍼受療経験は、英国・フランスでは12%、ドイツでは16%との報告があり、英国の鍼受療者の約24%、ドイツの鍼・指圧の受療者の約62%は医師から推奨されて受療していた。 【結論】日本の鍼が更に発展するために、欧州で行われている次の4つを検討することは有意義と考えられる。1. 鍼の独自性に十分留意し、医療施設で公的医療保険の対象となる鍼の実施。2. 鍼とはり師に対する医師の認識・理解の促進。3. 医師に対する西洋医学としての鍼の教育。4. はり師が毎年生涯研修を実施するための自主規制機関への所属

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