全日本鍼灸学会雑誌
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原著
慢性腰痛患者における心理社会的要因と4週間後の鍼治療効果との関係 (第2報)
ー反復測定データの解析とともにー
松田 えりか近藤 宏木下 裕光砂山 顕大石崎 直人鮎澤 聡
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2021 年 71 巻 2 号 p. 95-106

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抄録
【目的】慢性腰痛患者に対する鍼治療効果に影響する心理社会的要因について、われわれは直後効果に着目した結果を既に報告したが、今般は4週間の鍼治療の前後の状況について後方視的な解析を行った。 【方法】2019年8月~12月までに本学東西医学統合医療センター鍼灸外来を受診した初診慢性腰痛患者のうち、初診時のVisual Analogue Scale(以下VAS)による腰部疼痛強度が30以上であった53人を対象とした。調査項目は心理尺度のPain Catastrophizing Scale(以下PCS)、Hospital Anxiety and Depression Scale、Pain Self-Efficacy Questionnaire、社会的要因として同居家族状況、最終学歴、社会参加状況、その他Roland-Morris Disability Questionnaire(以下RDQ)、鍼治療のイメージ、および基本属性とした。治療開始前と4週間後のVAS、RDQの値および疼痛についてのanchor questionから「効果あり群」 と「効果なし群」 を定義し、この区分を従属変数とするロジスティック回帰分析を行った。また、4週間の治療前後のデータについて反復測定分散分析を行った。 【結果と考察】効果あり群は24人、効果なし群は29人であった。ロジスティック回帰分析で有意な変数として抽出された項目はPCS(OR: 0.924、P =0.037)と年齢(OR: 0.418、P =0.005)であった。反復測定分散分析では、全評価項目において4週間の前後で有意差が認められたが、直後効果の有無による分別については、動作時VASのみに有意差が認められた(P =0.046)。以上により、早期から心理社会的要因に着目し、心身両面から適切な評価と判断を行い治療にあたることが重要であると示唆された。
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