全日本鍼灸学会雑誌
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71 巻, 2 号
全日本鍼灸学会雑誌
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巻頭言
原著
  • -鍼刺激感覚とタイミングに着目した調査研究-
    藤本 英樹, 金子 泰久, 泉 重樹, 櫻庭 陽, 吉田 行宏, 鳥海 崇, 池宗 佐知子, 玉地 正則, 吉田 成仁, 近藤 宏, 古屋 ...
    原稿種別: 原著
    2021 年 71 巻 2 号 p. 76-85
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は、鍼治療がスポーツ選手の競技活動に及ぼす影響について調査することである。 【方法】対象となったスポーツ選手は、合計1,804名であった。方法は、集合調査法とし研究の主旨に同意したスポーツ選手に対して、質問紙もしくはWebアンケートを配布し回答を得た。項目は、①プロフィール(性別、年齢)、②鍼治療を受けた直後に動かした感覚、刺激感覚の残存期間、刺激強度、刺激感覚と治療効果、③鍼治療を受けるタイミング、④鍼治療を受けてプレー(動き)に支障をきたした、もしくは好影響があったかについての質問を設けた。 【結果】有効回答数1,525名のうち、鍼治療の経験があるのは、841名であった。鍼治療を受けて直後に動いた感覚は、軽くなった:43.9%と最も多かった。また、少数ではあるが、鍼の感覚(痛み)が残った:10.6%、力が入りにくかった:7.7%との回答もみられた。鍼治療の刺激感覚が残存したかについては、すぐに消失した:59.8%が最も多かった。鍼治療を受けた刺激感覚は、適度:58.6%が最も多く、鍼治療の刺激感覚と治療効果では、刺激感覚があり効果が実感できたは、48.3%であった。鍼治療を受けるタイミングとしては、練習や試合の後:21.8%が最も多かった。 鍼治療によりプレー(動き)に支障をきたしたかについては、75.0%が支障をきたさなかったと回答していたが、少し支障をきたした・支障をきたした・とても支障をきたした回答を合計すると4.0%であった。また、鍼治療はプレー(動き)に好影響があったかについては、あった・少しあったの合計は、60.1%であった。 【考察・結語】スポーツ選手を対象に鍼治療を行う際には、ガイドラインに準じた鍼治療を行うとともに、競技・試合日程や鍼刺激量を考慮し施術を行う事により、競技活動に支障をきたすトラブルを予防できるものと考えられた。
  • -切迫早産妊婦を含む371例での検討-
    田中 恵, 武田 真輝, 小野 雅代, 種田 遥美, 古谷 陽一
    原稿種別: 原著
    2021 年 71 巻 2 号 p. 86-94
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー
    【目的】骨盤位に対する鍼灸治療の効果と安全性を検討する目的で、当科における骨盤位の矯正率および有害事象を調査したので報告する。 【対象と方法】対象は当院の産婦人科で骨盤位と診断され、20XX-9年4月1日から20XX年10月31日までの期間に鍼灸治療を受療した妊婦とした。対象妊婦を診療録で後ろ向きに調査した。主な調査項目は、鍼灸開始時の妊婦の状態(切迫早産の有無)、施術姿位(座位もしくは側臥位)、鍼灸後に頭位になった率、経膣分娩の率、および有害事象の発生状況とした。矯正率は鍼灸後に頭位になった率と定義した。有害事象の定義は「因果関係を問わず治療中または治療後に発生した好ましくない医学的事象」とした。 【結果】対象の妊婦は371名。鍼灸開始時に切迫早産と診断されていた妊婦は57名、そのうち21名は入院中の切迫早産妊婦だった。施術姿位は座位が45.2%(168例)、側臥位が54.7%(203例)であった。骨盤位矯正率は72.2%(268例/371例)であった。鍼灸開始時に入院中の切迫早産妊婦では矯正率が28.6%(6例/21例)と、外来通院の妊婦に比べて有意に低かった。施術姿位による矯正率は座位と左側臥位との間に有意差を認めず、左側臥位での施術では迷走神経反射の有害事象が見られなかった。施術回数あたりの有害事象発生頻度は1.1%(21件/1916回)、症例数あたりでは5.7%(21件/371症例)であった。因果関係の明らかではない破水2件が見られた。 【結論】妊婦における安全な施術姿位は左側臥位と考えられた。有害事象はほとんどが軽症または中等度のものであったが、因果関係の明らかではない2例の破水がみられた。骨盤位矯正の鍼灸治療を実施する際には、主治医の産科医と十分に連携をとる必要がある。
  • ー反復測定データの解析とともにー
    松田 えりか, 近藤 宏, 木下 裕光, 砂山 顕大, 石崎 直人, 鮎澤 聡
    原稿種別: 原著
    2021 年 71 巻 2 号 p. 95-106
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー
    【目的】慢性腰痛患者に対する鍼治療効果に影響する心理社会的要因について、われわれは直後効果に着目した結果を既に報告したが、今般は4週間の鍼治療の前後の状況について後方視的な解析を行った。 【方法】2019年8月~12月までに本学東西医学統合医療センター鍼灸外来を受診した初診慢性腰痛患者のうち、初診時のVisual Analogue Scale(以下VAS)による腰部疼痛強度が30以上であった53人を対象とした。調査項目は心理尺度のPain Catastrophizing Scale(以下PCS)、Hospital Anxiety and Depression Scale、Pain Self-Efficacy Questionnaire、社会的要因として同居家族状況、最終学歴、社会参加状況、その他Roland-Morris Disability Questionnaire(以下RDQ)、鍼治療のイメージ、および基本属性とした。治療開始前と4週間後のVAS、RDQの値および疼痛についてのanchor questionから「効果あり群」 と「効果なし群」 を定義し、この区分を従属変数とするロジスティック回帰分析を行った。また、4週間の治療前後のデータについて反復測定分散分析を行った。 【結果と考察】効果あり群は24人、効果なし群は29人であった。ロジスティック回帰分析で有意な変数として抽出された項目はPCS(OR: 0.924、P =0.037)と年齢(OR: 0.418、P =0.005)であった。反復測定分散分析では、全評価項目において4週間の前後で有意差が認められたが、直後効果の有無による分別については、動作時VASのみに有意差が認められた(P =0.046)。以上により、早期から心理社会的要因に着目し、心身両面から適切な評価と判断を行い治療にあたることが重要であると示唆された。
報告
  • 塩崎 郁哉, 二本松 明, 中村 真通
    原稿種別: 報告
    2021 年 71 巻 2 号 p. 107-115
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー
    【目的】フォトグラファー(以後写真家)は、長時間の撮影や写真データを整理するパソコン業務、使用機器の準備・運搬などの多岐にわたる業務に携わる。様々な症状を有する可能性があると想定されるが、写真家を対象とした疼痛や疾患に関する調査は認められない。そこで本研究は写真家の作業関連疼痛の実態について質問紙調査を行った。そして質問紙調査の回答で最も主訴として多かった頸肩部の痛みやこりを有する対象に対して鍼治療を行い、その効果について検討した。 【対象及び方法】写真家として勤務する者(138名)を対象に調査を行った。調査項目は業務中に感じる症状とその業務内容など計7項目である。質問紙調査回答者の中で、頸肩部の主訴を訴え、鍼治療を希望した6名(男性1名、女性5名)に対し鍼治療を行った。治療前と治療直後に肩こりのVAS、肩頸部の圧痛および硬結スコアを測定した。 【結果】質問紙の回収率は60.1%だった。有訴率では頸肩部の主訴が86%で最も多かった。性別の解析では頸肩部の主訴は女性、腰部の主訴は男性に多かった。鍼治療の効果については 肩こりの VASは鍼治療後に低下し(p<0.05)、圧痛スコア、硬結スコアについても鍼治療後に低下した(p<0.05)。 【考察及び結語】頸肩部の痛みやこりが女性に多い理由としては、女性の方が筋力が低いことが考えられる。また腰部の痛みやこりが男性に多い理由としては、被写体との身長差により腰部に負荷をかけている結果不良姿勢になる機会が女性よりも多いことが考えられる。以上のような写真家の主訴として最も多い頸肩部の職業関連疼痛に対して鍼治療は有用性があるものと考えられた。
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