全日本鍼灸学会雑誌
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症例報告
神経サルコイドーシスが疑われた両側末梢性顔面神経麻痺患者に対する 鍼治療の症例報告
堀部 豪荒木 信夫小内 愛井畑 真太朗山口 智
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2023 年 73 巻 1 号 p. 34-40

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抄録

【目的】神経サルコイドーシスは両側末梢性顔面神経麻痺の原因疾患の一つであるが、 これに対して鍼治療を実施した報告は我々が調査した限り存在しない。 今回、 両側末梢性顔面神経麻痺を発症、 神経サルコイドーシスが強く疑われた患者に対して鍼治療を実施し良好な経過を認めた症例を報告する。 【症例】73歳男性。 主訴:両側顔面神経麻痺。 現病歴:X年7月24日に右顔面神経麻痺発症、 27日に左顔面神経麻痺発症。 8月2日に当院脳神経内科を受診、 翌日に精査加療のため入院。 精査により神経サルコイドーシスが強く疑われステロイドパルス療法を実施。 8月26日に退院するも両側顔面神経麻痺は残存、 9月13日に当科を受診し鍼治療が開始。 身長159cm。 体重48.6kg。 神経学的所見:バレー徴候陰性、 病的反射陰性、 上下肢の深部腱反射や感覚検査は正常。 MMTは左足関節背屈のみ3。 柳原法:右26点、 左10点。 顔面神経を目標とした鍼通電刺激による表情筋収縮反応は、 右は0.04mAで収縮あり、 左は0.30mAで収縮なし。 右は軽度、 左は重度麻痺と考え、 麻痺の改善・後遺症の抑制を目的に鍼治療を実施。 鍼治療方法:右は聴会 (GB2)・下関 (ST7) へ鍼通電療法。 左は前頭筋、 眼輪筋の上・下、 上唇鼻翼挙筋、 鼻筋、 大・小頬骨筋、 口輪筋、 口角下制筋、 広頚筋へ置鍼治療を10分間実施、 106病日からは同部位に非同期鍼通電療法を実施。 治療頻度:週1-2回。 評価:柳原法。 経過:脳神経内科から処方されたステロイド薬に鍼治療を併用し、 右は170病日に38点、 左は204病日目に38点となった。 【考察・結語】本症例への治療効果は薬物治療と鍼治療の併用効果と言える。 神経サルコイドーシスが疑われた両側顔面神経麻痺患者に対して、 顔面神経の障害程度を考慮した鍼治療を実施した結果良好な治療成績を認め、 鍼治療は治療法の選択肢の一つとなり得る可能性が示唆された。

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