【目的】長期化した感冒後嗅覚障害に対し、 鍼治療と日常の嗅覚訓練の併用が著効した症例を経験したので報告する。 【症例】45歳女性。 主訴は嗅覚障害。 【現病歴】X-4年に溶血性連鎖球菌感染による上気道症状を発症。 回復後から全くにおわなくなった。 S大学病院にて精査の後、 上気道感染由来の嗅覚障害と診断された。 亜鉛製剤を服用したが改善せず、 X-3年に通院をやめA鍼灸院に10回ほど通った。 鍼治療を受けているうちににおいが量的に少しずつわかるようになったが、 正しくにおわない症状も自覚するようになった。 その後も不定期に鍼治療を受けていたが、 状態に大きな変化なく現在に至る。 【経過】治療前のOlfactory Visual Analogue Scale score (VAS) は38mm、 日常のにおいアンケートのスコア (アンケート・スコア) は30%であった。 鍼治療は顔面部への刺鍼を中心に行い、 並行して患者には毎日様々なにおいを嗅ぐ嗅覚訓練を行うよう指導した。 治療開始1ヶ月半の第4診目でアンケート・スコアが85%へと著変し、 治療開始半年の第7診目ではVAS88mm、 アンケート・スコア95%まで改善した。 その後も改善状態を維持し、 治療開始1年半の第18診でVAS97mm、 アンケート・スコア97.5%となり鍼治療終了となった。 【考察】顔面部を中心とした鍼治療が本症例の嗅覚障害の改善に寄与したと推測される。 また、 鍼治療に嗅覚訓練を併用したことにより、 鍼治療による嗅粘膜や嗅神経に対する作用に、 嗅覚訓練による嗅神経への作用が相乗的に組み合わさったことで、 長期化した嗅覚障害が改善したと考えられた。 【結語】年単位の病悩期間で改善に乏しい感冒後嗅覚障害においても、 鍼治療と嗅覚訓練の併用で改善することが示唆された。